死体を見つけたのは、小学校三年生の夏だった。
 公園の蝉がしきりににうるさく鳴くのも、太陽がこれでもかと熱線を送ってくるのも気にせず、僕たちはいつものように一緒に登校していた。
 その日は暑いくせに風が強くて、涼しいというより熱風のそれに晒されて、息苦しかったのを覚えている。
 でもあの時、誰の通学帽が飛ばされたのかは、よく覚えていない。
 飛ばされた帽子は風に乗り、渡っていた橋の下へと舞い降りる。それを、僕たち六人は追いかけたのだ。
 雑草の生える斜面を下り、河川敷へと足を運ぶ。その日、浅い小川は太陽の光を反射して、やけに目が痛かった。
 だから、それに気づくのに、遅れたのだ。
 事故による、転落死だったらしい。
 頭から落下して河川敷の岩にぶつかり、その付近は雑に赤で汚れていた。鮮血という言葉があるのだから、血は綺麗な赤色をしているのだと思っていたのだけれど、夏の日差しに照らされて乾燥したのか、それから流れる血は赤茶色を通り越してどす黒い。
 熱風が僕たちの間を吹き抜けて、蝉はうるさく鳴き叫び、太陽は煌々として僕らを照らす。その光を反射する小川の煌めきが、僕らの目の前のそれを隠すかのように眼球に飛び込んでくる。
 でも僕らの眼球は、瞬きを忘れたように、それを凝視していた。
 頭部の割れた、夏の死体。
 あまりにも突然突きつけられたその『死』に、僕たち六人は、変わってしまった。
 ある者は、生に執着し。
 ある者は、この世に懐疑的になり。
 ある者は、人生の価値を求め。
 ある者は、生と死を同視し。
 ある者は、生を謳歌しようとし。
 ある者は、永遠の生を求めた。
 
 これは、『死』によって変わってしまった、僕たち六人の物語。
 いずれ死ぬことになる、僕たちの物語。