ここは、幽世(かくりよ)。
その中心街・幽玄界のそのなかに古くから続く旅館『幽玄館 龍別邸』。
 その一角にある、小さな店。『幽玄館 龍別邸』前の小さな太鼓橋まで来ると 店の提灯と幟が見える。
 「めし処」と書かれた提灯の裏には、「さけ・こーひー」とある。そして並ぶ黄色い幟には『語り処 つきうさぎ』。
「めし処」であり、「酒処」でもある「つきうさぎ」。
 ここでは、心優しき女将が作る美味しい料理と酒。彼女を支える主人が醸しだす美味しいコーヒーとコーヒーアレンジの数々が愉しめる。
 そして「珈琲酒」を注文したときには、ここは「めし処」でも「酒処」でもなく、「語らい処」へと様相を変える。
 「語らい処」で語られるのは、誰にも打ち明けられない、しかし一人の胸のうちに置いておくには重すぎるような秘めごと。  
 基本的には語った本人と主人と女将のなかにだけ留められることとなる。その内容によっては、女将や主人が動いて解決へと導くことも…。

 なんにせよ、『つきうさぎ』は、今日もひともあやかしも関係なくお腹もココロも満たされる。そんな場所としてひっそりとだが、確かに幽世に息づいている。

 おや?今夜の「語らい処」が開店しそうなお客様が太鼓橋で逡巡しているようです。
どんなお話しを持ってきたのか…それは、また別の機会に…。