高校生活初日。

 俺は後ろの席の男に見惚れてしまった。

 ほとんどの奴が中学からあがってきている為、見知った顔で埋まっていた教室に俺の後ろに座った見た事がない生徒。

 なんて綺麗な顔をしてるんだ……

 彼の美しい顔立ちは、この教室の中でも群を抜いていた。クラスメート達も彼の存在に落ち着きがなくなっている。

 髪はサラサラ、色白の肌。体は折れそうなほど華奢で……切れ長の目に長い睫毛(まつげ)……俺とは正反対だな。

日野平(ひのだいら)(ゆう)です……父の転勤でアメリカに住んでました」

 そいつは立ち上がり、淡々と自己紹介をする。

 新入りか……見た事なかったわけだ。
 日野平有……有、か……

 なぜだか彼に俺の事を1番に覚えて欲しくて、すぐさま話しかけた。

「よっ! 俺、赤羽隼人(あかばねはやと)…………」



「夢……か」

 目が覚め、ベッドの脇に置いてある時計を見た。まだ早朝の4時で……隣で有がスゥスゥ寝息をたてている。俺は有の寝顔を幸せな気分で眺めた。

 大学が夏休みになり、昨日から有が東京へ来てくれた。久しぶりに会い、気分が高ぶったせいなのだろうか……有と出会った日の事を夢に見るなんて。

 俺は有の柔らかい髪にそっと触れる。

 お前、知らないだろ? 好きになったのは俺の方が先なんだぜ……

 有がううん……と寝言を言いながら寝返りを打ち、俺はクスリと笑った。

 もう少し寝ようと目を瞑ると、あの日のエンジェルロードが頭に浮かぶ。


『大切な人と手を繋いで渡ると願いか叶う』


 また、願いを叶えてくれたあの道をお前と歩きに行こう……そんな事をボンヤリ思いながら、俺の1番大切な(ひと)が隣にいる幸福に包まれ、眠りについた。




《了》