「高校では友達もういらないかなって」
「そうなの? みんな高校違うしね、一から作るのしんどい?」
 みんな、と言うのは中学の時の友達を指している。中学時代、私は友達が多い方だった。けれどそれを壊したのは、私。
「うん、そうだね。一人って楽だし」
 チラリと花乃子を見ると、特に気にしてなさそうな様子で、ふうん、と呟く。彼女のこういうところに私は安心出来る。追求してこない、変なリアクションを取らない、自分の考えを押し付けない、興味があるのかないのか、どっちでもいい。そういうスタンスだから、花乃子の前では本当を言える。唯一彼女とは、友達でいたい。
 駅で別れ、学校へ向かった。
 時間は淡々と進み、放課後になるとどこへ遊びに行くかはしゃぐ集団や、椅子に根付いてお喋りに夢中になっているグループを素通りして教室を出た。その後を着いてくる足音が聞こえ、早歩きに変える。
「あーさき、歩咲、ちょちょ、ちょっと、歩咲、無視しないでよ」
 肩を掴まれ、釣られて振り向くと、思った通りの人物、川田紬がムスッとした顔で立っていた。
 紬は中学から仲良くしている……というより、私に着いてくる。高校に行くまではこうじゃなかったが、真似をしてくるようになった。大きな声では言えないが少し苦手な女の子。私と同じ長さの肩にかかる髪も、高校生になってから開けたピアスも同じ。せっかく可愛い顔をしているのに、真似する人を間違えている。