「うん、星村が俺の生活に入ってこないって宣言してくれてるから気が楽なんだ」
「屈折してるなあ」
「星村もだろ? 君は君の生活からそうなんだから」
 まあ似たようなものなのかもしれない。ああ、でも、とある人物の顔を思い浮かべる。
「最近、そうもいかないんだよね」
「ん?」
「私の真似……をしてくる子がいて」
「へえ、そりゃあ、物好きだ」
「どういう意味っ」
 思わず力が入ってしまい、また変なところへ飛んでしまった。それを軽快な笑い声を上げながら拾いに行く背中を睨みつけた。
 確かに、私はちんちくりんだし、鼻も低いし、顔だって可愛くない。髪も短いし。……それは私の好みでやっていることだけれど。
 ごめんごめんと悪びれる様子のない謝罪と共に帰ってくると再びキャッチボールが始まる。
「まあでも真似されるっていいことだよ」
「どうして?」
「憧れられてるってことだから。うん、確かに気持ちは分かる」
「はあ? ブレブレ過ぎでしょ、物好きって言ったくせに」
「冗談だよ」
 ちょうど彼の手にボールが収まると、動きを止めてジッとその手を見つめ始めた。何となく終わりの気配を感じて、もう少ししていたかった物足りない気持ちを抱きながら、近寄った。
「星村は凄いよ、一人でいることが怖くないんだから」
「怖いの?」
「……目立つのが嫌なんだ、一人だと存在が浮き彫りになるような気がして。よく言うだろ、木を隠すなら森の中って」
 その気持ちも、少しわかる。私だって、最初はそうだったから。