「星村さんはさー」
 ボールが飛んでくる。バシッと気持ちいい音を立てて私の手に収まった。野球ボールは素手で受け止めるべきじゃないな。
 投げながら「さんはやめて。望月くんが先に言ったくせに」と返した。上手いこと彼の手中に収まり、やっとまともにキャッチボールが開始された。
 年上だからとさんを付けて呼んだら嫌がったのは彼の方。私だって、さん呼びは何だかこそばゆい。すかさず言い返した私に、う、と声を漏らしたが、持ち直してきた。
「星村はさ、友達……作らないの?」
「うん。いらない。もういいかなって」
「もういい?」
「そういう感覚、望月くんならよく知ってると思うけど?」
 一瞬、ピタリと動きを止めた彼を見て、言葉がきつくなってしまったことに気付く。すぐにボールは返されたが、謝りたいのに言葉が出てこない。何か別の言葉で取り繕おうとするがそれも出てこない。代わりにボールを返すと、そうだね、と彼が呟いた。
「ここなら好かれる心配もないから楽だよ」
「うん? 私に、好きになるなってこと?」
「そうじゃなくて。正直、君にきつい言葉をかけられると安心する」
「……マゾ?」
「そうかも」
 ちょっと子どもっぽい笑顔を見せた。外で見る顔もこんな感じだが、髪がぺたんこだからか、少し幼く見える。こんな風にも笑うんだ。
「無関係だからかな」
「無関係?」