「だって住む世界が違うんだもん」
「住む世界って」
「そうでしょ、明るい望月くんと暗い私じゃ、接点もないよ。ただでさえ学年も違うのに親しくしてたらなんて言われるか。なんて説明するの?」
 詰め寄ると、うぐ、と情けない声で言葉を詰まらせた。
 これが彼の本当の姿。外では明るく振る舞っているが、本来は気弱で優柔不断。ここに来て数日だがそれだけ分かるのに十分な時間を過ごしたつもり。
 ここは夢の中だ。
 白とグレーの間の色が、もわもわと広がり、場所を一応形成している。床の感触はない。壁もない。永遠に続いている空間。どことも言えない変な場所。
 私たちは何故か同じ夢を見る。と言うよりは、私たちは、夢の中で会っている。
 それともう一つ分かっていることがある。
 不意にころころと転がってきた野球ボールが私の手に当たった。ボールを手に取り、望月くんに「キャッチボールしよう」と声をかける。彼も素直に応じて少し離れてくれ、ボールを投げてみるが思っていた場所とは違う、変なところへ飛んでしまった。
「下手くそー」
「うるさい!」
 ボールを追いかけに行く背中に悪態をつくが我ながら本当に下手くそだ。
 もう一つ分かっていること。どうやらこれは望月くんの夢の中ということ。私は望月くんの夢に誘われているらしく、その上で二人が見たものが反映されているらしい。
 その証拠に野球ボール。彼は今日、体育の授業で野球をしていた。普通の夢と同じように記憶に残ったことが反映される。昨日なんかはホラー番組を見たらしく、ここにテレビが現れて二人で鑑賞した。そのホラー番組は私も見たからほとんど同じ内容だったが。