鮎釣りとは囮鮎で、放魚され野生化した育った鮎の縄張りを荒らし、囮鮎の尾びれ近くの針で引っかけて竿とタモですくう釣り。

キャップとグラサン型のサンバイザーを新調した私が、現在居る鮎がすごしそうなチャラセは、去年先輩に教わったとっておきの場所なのだが、スリムウェイダーと言う下半身をスボンの様に防水する釣り衣装に身を纏った釣り女が「のけ」と無言の圧力をかけてくる。

日和見な私はぶつぶつ言いながらも別のチャラセに移動した。水音をたてない様に、慎重に囮鮎をチャラセへと追いたてる。

良いぞと手元の感触が震えた時、水音を荒々しくたてながら、あの釣り女が現れた。

嗚呼、私の鮎がっと折角の獲物を逃した私は大声で怒鳴りたい衝動にかられたが、野生の魚が警戒するので堪えた。

もう囮鮎は元気がなくなって鮎の囮釣りに使えない。去年の失敗をきに、数匹囮鮎を買ってて正解だ。私は弱った囮鮎を元気な囮鮎と取り換えようとした。

その時「貴女、そろそろ私に釣られない?」とバカ女が話しかけてきた。馬鹿っ黙れよと言う気持ちを圧し殺してハナカンで鼻の膜を貫通して、囮鮎をセットする。

そうしてチャラセに放つと取り換えた囮鮎はぐんぐん縄張りを荒らしてゆく「よっしゃー」と思った時、なんと彼女も囮鮎を私と同じチャラセに泳がせた。

で、結局私が釣糸が絡まらない様に、囮鮎を手元に引き寄せる。すると彼女の囮鮎が何匹目かのヒットに恵まれた。

悔しかったけど釣りを無心で楽しみたかった私は、別のチャラセへと移動した。ソコには先客が二人も居て、ド素人の私は仕方なく元の場所に戻った。

そしたら、あの馬鹿女が「まだ私に釣られる気にならないの?」と呆れた表情をして「鮎の釣りたて焼き魚食べない」とご馳走の話を持ちかけられた。