起きたら男の体になっていた。勿論私は生粋の女性だ。
おかしい。何十年も親しんだ私の体は、問題なく女性の体であり、決して男性の体ではない。

なのに今、私が存在してる体は完全に男の体だ。確かにボーイッシュな顔をしており、胸もそんなにふくよかではなかったが、小さな膨らみがペタンコなのは一体どーしたんだ?

それより、パートナーの寝顔を見ながら、今後の対策に慌てた。男性の体の私を妻は受け入れてくれるだろうか?生理的嫌悪で別れを言い出されるかもしれない。

でも、どんな姿をしていても私は彼女を愛しているから、彼女にもそれを求めてしまう……か?
どうしよう。気持ち良く眠っている彼女の体が、もし男性体に変化してしまったら?私は彼女を愛する事が出来るのだろうか?
無理ー絶対に無理ー。どうしよう可憐な彼女が大好きな私だから、男要素のある今の私は愛されない。
何度も確かめたペタンコの胸を触り私は、彼女と非接触する日常をイメージした。兎に角ベットから出なければ。と思った時、寝ぼけた彼女が私に抱きついてきた。
冷や汗で顔がぐちゃぐちゃになる。私の背中に彼女のささやかな胸があたり、心拍数が爆発してしまいそうだ。
その内起きる彼女に私は追い出されるのだろうと落ち込んで目をつぶり身震いをしていたら、「おはよ」と可愛らしい彼女の声に起こされた。
そして私は起きた。するとその体は女性だった。夢落ち?と悪夢だと騒ぐ神経に「どっしたの?」と彼女は可愛く笑った。



日曜日のある日、私は高校の同窓会でかってのツレ達も居ず、一人でぽつんとしてた。

したら、グループのボスに目をかけられ、いつの間にかお喋りをしてた。

みんなは旦那さんの話をしだした。私は百合のカミングアウトを、ツレ達にもしてなかったので、誰も知らない中、ノンケのふりをしていた。

専業主婦の私は奥さんの情報を男性に聞こえる様に話した。

私は地味だったので、とくに突っ込まれる事もなく、無事に会場を後にした。

今日は仕事が休みで、家で大人しく留守番をしてる彼女に『申し訳ない』と心の中で謝罪し、包んでもらったパーティの残り物を速く彼女に届け様と帰り足を加速した。

帰り道、私は私だけの奥さんの事を恥じずにカミングアウトするべきだったか?と反省するも、ツレ達も居ない場所で『好奇の目』に晒される事も無いかと自分を励ます。

そうして帰宅しチャイムを押すと、何年ぶりだろうと思う奥さんの料理姿に出くわした。「お料理もらってきたから、作らなくて良かったのに」と笑うと「明日で良いから食べてね」と馴れない手つきでお皿にラップをしてゆく。

そんな奥さんをみていたら『いじましくて』「大好き」と背中をハグした。

「同窓会で何かあったのか?」と聞く奥さんに『何も聞かないで』という雰囲気をつくり、奥さんの背中にでれる顔を埋めた。



兄貴のはしたない写メが届いた。会社の宴会で演し物としてやったおふんどし姿に、背景を合成したらしい。いつの日にか私を悩ました悪夢を彷彿する、感じなくてもいい罪悪感を感じて胃が痛くなる、メンタル豆腐な、不幸な私。とにかく、メールを開けた瞬間に、ワイシャツ姿におふんどし、その部分が目に焼きつき、おぇっと思う。それを奥さんが後ろから覗きこみ「義兄さん、本当にあなたにそっくりね」と笑ったので、いけない雑誌を見つかったかの様な中学男子の様に、あわあわしていると、「よかった」と私の肩に顔をのせるので、心拍数をあげながらも「何が?」って疑問をぶつけた。
「あなたが世間一般の男性じゃなくて、私を虜にする素敵な女性で」と、えへへと笑う彼女の髪が首にくすぐったいから、あわあわしてた事も忘れ、知的探求心というよりは、単なる好奇心で私は、その顔を見てみようと思いふりかえろうとした。すると「ダメ」と奥さんが慌てて私の姿勢を固定する。「どうしたの?」と聞くと「けっこう純愛メロドラマみたいなセリフ吐いたんだよ」と、彼女の私の肩にのせた顎が温かくなってゆく。「赤面してるの?」と意外そうな声をかけた。すると「にぶちん」と恥ずかしげな声と共に、両方のほっぺたをぎゅっとつねられた。奥さんに言わせると鈍感?な私は「あうち」と、照れかくしにただただ付き合うのであった。



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