─── 柚羽との出会い 翼side ───
大学の入学式の日の朝、僕は通学途中電車が急停車する。
急なブレーキの反動でアイボリーの7分袖セーターにくすみピンクのチュールスカートを履いた女性とぶつかり、耳に付けていた桜のピアスが輝く。
「すみません…」
「いえ…」
ほんのり甘い香水の香りが俺を包む。
彼女は俺に謝罪をしてからスマホを触り始める。
俺もスマホを触りながらチラっと彼女の方を見た。
スマホには#春から○○大学入学の文字が見えた。
どうやら俺と同じような感じのようだった。

暫くしてようやく電車が動き出した。
そして大学の最寄り駅に着くとさっきの彼女が前方に居た。
が、彼女は突然立ち止まりスマホを見始めた。
道に迷ったのだろうか不安そうな彼女が辺りを見渡す。
「すみません、どうされましたか?」
「…あ、さっきはすみませんでした。私この大学に行きたいんですけど、道に迷ってしまって…」
「あ、俺も目的地同じなのでよろしければ一緒に行きませんか?」
「そうなんですか!?うわー良かったぁー!焦ってたんです!是非一緒に行きましょうっ!」
これが俺と柚羽との出会いだった。

「おはよー翼」
「はよ、柚羽」
「今日の課題終わってる?」
「終わってる」
「見せて!あとで学食奢るから!ねっ?」
「…ったく、カツサンドで手を打ってやる」
「やったー!ありがとー!」
そして柚羽は速攻で課題を写し終えた。
「早すぎんだろ」
俺が思わず突っ込むと
「えへへー、こういうのは得意だからね!」
「ったくー…こういうのは自分でしろよなー」
そんなこんなで入学してから早10日、そんな俺らはいつの間にかカップルなのではという噂をされるようになり、いつしか周知の事実で暗黙の了解となっていた。