母さんの顔の額には深いシワが刻まれ、怒りが表情にあふれていた。その姿はまるで鬼のようで、強く畏怖した。
 ただ怖くてたまらなくて、声が震えるたびにやり直しを求められた。まるで生き地獄のようなスパルタ授業で、母さんは俺の動きひとつひとつに、喜怒哀楽の中でも特に怒りと哀しみを表に出していた。終わりが見えないその状況に、ただ息苦しさを感じるばかりだった。
 オヤジはというと、そんな俺に「どうしてできないんだ」と叩いてきた。
 母さんの話によれば、俺のせいでオヤジは酒を中毒的に飲むようになり、豹変するようになったらしい。
 どうやら、俺が原因でオヤジそのものが変わってしまったらしく、母さんが俺に厳しく当たるのは、父さんを変えたことへの仕返しだという。
 知らぬ間に自分で自分の首を絞めていたようで、自己嫌悪に苛まれ、最低な自分を感じずにはいられなかった。
 いっそ死にたい。いっそ消えてなくなりたい。
 その気持ちは日々膨らんでいくばかりで泣き暮れた。
 気を抜いたら感情すらどっかにいってしまいそうだった。
 でもそのおかげで、先生や親とはなんとか会話できるようになった。
 必死に相手の口元を読み取ろうと、目を凝らし、集中して努力した。
 それでも、どうしてもわからないことも多く、同級生たちは誰も話しかけてくることがなくなり、次第に孤立していった。
 自分が空気のように扱われているのを感じ、まるで幽霊にでもなったかのような錯覚に囚われた。