とりあえず奏翔の歩のスピードに合わせるように隣を歩き、図書館を出る。
それから【案内してもらっていい?】と彼へメッセージを送る。あまりにも暗そうなので口では話かけにくいのだ。
それに対し奏翔はスマホをチラリと見て「わかった」と返してくれた。やはり顔は上げないままなのでよほど私と目を合わせたくないらしい。
そのまま世間話は一切振ってこず彼はただ、スマホを見ながら口で曲がる方向を述べるだけであった。
その行動に拒絶を感じ、何か話題を探そうとはするものの、ああでもないこうでもないと考えるばかりで気まずい時間だけが過ぎた。
そして着いたのはもちろん、見晴らしのいい丘。
緑に生い茂る草原にぽつんとそびえ立つ1本の大きな木。
人が座れるような二人がけの茶色い木のベンチ。
世間でいうストリートピアノ的な黒いアップライトピアノ。
その向こうに一望できる街の景色。
梅雨らしい生ぬるい風が鼻をかすめ、空を仰いでみると、雲一つない快晴が広がっていた。
「ここだよ。本当は秋の方があそこのカエデの木の見栄えがいんだけど」
奏翔はぽつんとそびえ立つ木を指差しながら言った。が、やはり顔は俯いたままだった。そのカエデの大きな木は緑や黄緑といった緑系の色を何色か混ぜたような葉を何枚もつけていて、生ぬるい風に揺れていた。
これがきっと秋なら色鮮やかに紅葉しているのだろうなと想像する。でもこれはこれでもいい感じがした。
私は肩にかけていたカバンからクリアファイルを取り出し、そこから二村くんと作った曲の楽譜を出す。
それから【案内してもらっていい?】と彼へメッセージを送る。あまりにも暗そうなので口では話かけにくいのだ。
それに対し奏翔はスマホをチラリと見て「わかった」と返してくれた。やはり顔は上げないままなのでよほど私と目を合わせたくないらしい。
そのまま世間話は一切振ってこず彼はただ、スマホを見ながら口で曲がる方向を述べるだけであった。
その行動に拒絶を感じ、何か話題を探そうとはするものの、ああでもないこうでもないと考えるばかりで気まずい時間だけが過ぎた。
そして着いたのはもちろん、見晴らしのいい丘。
緑に生い茂る草原にぽつんとそびえ立つ1本の大きな木。
人が座れるような二人がけの茶色い木のベンチ。
世間でいうストリートピアノ的な黒いアップライトピアノ。
その向こうに一望できる街の景色。
梅雨らしい生ぬるい風が鼻をかすめ、空を仰いでみると、雲一つない快晴が広がっていた。
「ここだよ。本当は秋の方があそこのカエデの木の見栄えがいんだけど」
奏翔はぽつんとそびえ立つ木を指差しながら言った。が、やはり顔は俯いたままだった。そのカエデの大きな木は緑や黄緑といった緑系の色を何色か混ぜたような葉を何枚もつけていて、生ぬるい風に揺れていた。
これがきっと秋なら色鮮やかに紅葉しているのだろうなと想像する。でもこれはこれでもいい感じがした。
私は肩にかけていたカバンからクリアファイルを取り出し、そこから二村くんと作った曲の楽譜を出す。