泉平くんとの曲作りは着々と進んだ。
 彼はその日の昼の授業をサボってまで、私の隣で曲作りをしていた。   
 三羽先輩と未弦は教室に戻っていったけれど、そんなの少しも気にしてないようでものすごく必死そうだった。それでいて、子どものように無邪気で泉平くんとは思えないほど声も顔も明るかった。
 放課後には向かいの音楽室に行き、ピアノを弾きながら楽譜の修正をしていった。
 私がピアノをぎこちない手でメロディーを弾き、それに泉平くんは異変を感じようが感じまいが演奏を中止させることが多々あった。
 その度にヘタだの譜面通りになってないなどと鬼のようにズバズバと指摘され、メンタルが壊れそうになった。どうやら彼には完璧主義なところがあるらしい。でも「それでいい」って言うだけのために止められることもあり、なんだよ!ってツッコミたくなった。
 そして校門が閉まるチャイムが鳴っても曲が完成することはなく、私は泉平くんと連絡先を交換することになり、電話しながらも楽譜の修正を続けた。彼の家にはピアノがあるらしく、それを弾いてもらいながら試行錯誤を重ねた。
 やっとのことで完成した時には0時を過ぎていた。でも達成感は強く爽快で、おそらく泉平くんが目の前にいたらハイタッチしていたぐらいだろう。それぐらいいつの間にか打ち解けていた。気にくわないところもあるが悪い人ではないのは確かだった。
 そして今奏翔は私の目の前にいる。泉平くんが「ちゃんと話せよ」と伝え、デートの時に待ち合わせした図書館に連れてきてくれることになった。
 泉平くんは奏翔を連行しただけで図書館の近くで私が来たことを確認してから「あとは、頼んだ……頼んだぞ!」と言い残し、私の背中を強く押して学校へと帰っていった。
 奏翔はというと、またもや普通は見過ごすような片隅で今回は膝を抱えて顔を埋めていた。赤茶色の髪は黒い帽子に隠されていて、話しかけにくさを感じた。
 ちなみに今回はおまわりさんに止められたりしないよう徒歩で来たし、格好も未弦から借りた薄紫色のブラウスに黒の長いスカートで前回の葬式のような地味で暗い格好よりかはましだった。