「譜久原くんと楽采は親友じゃないの。本当は生き別れの兄弟なのよ。佐竹暁則が二股かけててその両方の女性に子どもがいた。それが譜久原くんと楽采」
 三羽先輩は肘をつきながら真実を口にした。言われてみれば道理でふたりとも顔がどこか似ているわけだ。特に濃い琥珀色の瞳は同じである。
 でも佐竹暁則が二股かけてたのもその両方に子どもがいたのもびっくりだ。
 警察から学生時代は吹奏楽部でドラムを担当し、テストの成績は常に学年トップだったと警察からは聞いていたが、その割にはろくでもないクズである。
「そうだよ。どっちも人殺しの息子。ちょっと怖がらせたらひいてくれるかなと思って。でもこれじゃ、兄貴を悪者扱いしているみたいだな」
 三羽先輩に明かされたことでこれ以上に隠し通すのは無理だと思ったのか。泉平くんは開き直るように謝罪した。しかし真顔であり、申し訳ない気持ちがあまり伝わってこない。ただ言葉としては理解したのでまぁいいやと割り切る。
「先に産まれたのが奏翔だから僕は弟なんだ。母さんはそれぞれ違うけどな」
 すると、泉平くんは双見先輩の隣に座りながら言った。私がいるというのに堂々と手まで繋いでいてラブラブだ。一緒にいるのが気まずくて今すぐこの場を立ち去りたい気分だ。
「まぁそんなやつだろうと、廃部回避できるなら無理矢理にでも入れるけどね。トランペット吹けなくなるの嫌だったし、そしたら楽采ったら入学式の放課後にここで楽譜書いてたのよ。あの時はびっくりしたわー」
 ほんとほんと、と呆れながらも懐かしむように三羽先輩はクスリと笑った。普通は家族と記念撮影とかそういうことをするはずなのに余程曲を作るのが好きらしい。
「写真は兄貴と撮っただけで充分だったんだよ」
 それに対し、泉平くんは悪態をつくようにぼやいた。カノジョの前では感情をなんとか表に出せるのか、真顔ではなく表情が緩んでいる。