「……わ、わぁぁっ!」
目が覚めると、飛び起きざるを得なかった。目の前に奏翔の寝顔がドアップであったからだ。昨日は奏翔のベッドで寝ていたはずなのに、どうしてこうなっているのだろうと混乱する。
それでも、奏翔の寝顔は小さな子どものように見えて、思わず見惚れてしまう。このままずっと眺めていたいほど、癒される。が、壁にかけてある時計を見た瞬間、すぐに起こさなければならないことに気づいた。既に朝の8時を過ぎていて、ドア付近では泉平くんが呆然と私たちを見つめていた。
「……え、なんで一緒に寝てんの?ちょい兄貴」
泉平くんは気が動転しながらも、慌てて奏翔を揺すり起こした。
「んー、あと5分だけ……」
奏翔は寝ぼけながら、うつらうつらしている。その様子がまた可愛らしく、思わずクスリと笑ってしまった。
「いや、今日定期演奏会だから。ほら見ろ」
泉平くんは呆れながらもスマホの時計を見せた。それを見た瞬間、奏翔は目を見開き、反射的に飛び起きる。
「あ、悪い!泣いてたら楓音がベッドから落ちてきて、そのまま背中を擦ってきてさ、上げようと思ったんだけど……その前に眠気に負けちまってさ」
顔の前に両手を合わせて奏翔は謝ってきた。どうやら、私の寝相が悪かったらしい。
「……ごめん」
「いや、おかげでよく寝れた。ありがと……」
私が謝ると、奏翔は立ち上がり、そっぽを向きながら言った。その耳は恥ずかしそうに赤く染まっている。私もきっとそうなっているのだろうと思うと、さらに恥ずかしさがこみ上げてきた。
「……ありがとな。とりあえず、昨日の残り食べるぞ」
ひとつため息をついてから、泉平くんは私を見て、やや安心した顔を浮かべて感謝の言葉を述べ、部屋を出て行った。
ちゃぶ台には昨日の残りが広げられていて、それをみんなでいそいそと食べた。それから、沙湊さんの車に乗せてもらい、近所の「路上スタジアム」と呼ばれる会場へ急ぐ。和樂さんは、朝早くに起きて藤井先生と一緒に楽器運びを手伝いに行ったらしい。
会場に到着すると、すでに未弦や弓彩、三羽先輩とそれぞれの両親、そして私の父さんがいた。楽器の準備を済ませ、本番まで時間があるからとリハーサルを始めた。
そして、私は今、舞台に立っている。スポットライトが私を照らし、隣には奏翔がいる。その現実が信じられず、緊張が増していくばかりで、時間が近づくにつれて不安と焦りが押し寄せてきた。それは、テストの成績が悪くて「次はなんとかしなきゃ、1位を取らなきゃ」という重たい感覚に似ていた。
そのせいで、私はミスを連発してしまった。少しは慣れたはずの旋律でも、指が震えてぎこちなく、思うように動いてくれなかった。
目が覚めると、飛び起きざるを得なかった。目の前に奏翔の寝顔がドアップであったからだ。昨日は奏翔のベッドで寝ていたはずなのに、どうしてこうなっているのだろうと混乱する。
それでも、奏翔の寝顔は小さな子どものように見えて、思わず見惚れてしまう。このままずっと眺めていたいほど、癒される。が、壁にかけてある時計を見た瞬間、すぐに起こさなければならないことに気づいた。既に朝の8時を過ぎていて、ドア付近では泉平くんが呆然と私たちを見つめていた。
「……え、なんで一緒に寝てんの?ちょい兄貴」
泉平くんは気が動転しながらも、慌てて奏翔を揺すり起こした。
「んー、あと5分だけ……」
奏翔は寝ぼけながら、うつらうつらしている。その様子がまた可愛らしく、思わずクスリと笑ってしまった。
「いや、今日定期演奏会だから。ほら見ろ」
泉平くんは呆れながらもスマホの時計を見せた。それを見た瞬間、奏翔は目を見開き、反射的に飛び起きる。
「あ、悪い!泣いてたら楓音がベッドから落ちてきて、そのまま背中を擦ってきてさ、上げようと思ったんだけど……その前に眠気に負けちまってさ」
顔の前に両手を合わせて奏翔は謝ってきた。どうやら、私の寝相が悪かったらしい。
「……ごめん」
「いや、おかげでよく寝れた。ありがと……」
私が謝ると、奏翔は立ち上がり、そっぽを向きながら言った。その耳は恥ずかしそうに赤く染まっている。私もきっとそうなっているのだろうと思うと、さらに恥ずかしさがこみ上げてきた。
「……ありがとな。とりあえず、昨日の残り食べるぞ」
ひとつため息をついてから、泉平くんは私を見て、やや安心した顔を浮かべて感謝の言葉を述べ、部屋を出て行った。
ちゃぶ台には昨日の残りが広げられていて、それをみんなでいそいそと食べた。それから、沙湊さんの車に乗せてもらい、近所の「路上スタジアム」と呼ばれる会場へ急ぐ。和樂さんは、朝早くに起きて藤井先生と一緒に楽器運びを手伝いに行ったらしい。
会場に到着すると、すでに未弦や弓彩、三羽先輩とそれぞれの両親、そして私の父さんがいた。楽器の準備を済ませ、本番まで時間があるからとリハーサルを始めた。
そして、私は今、舞台に立っている。スポットライトが私を照らし、隣には奏翔がいる。その現実が信じられず、緊張が増していくばかりで、時間が近づくにつれて不安と焦りが押し寄せてきた。それは、テストの成績が悪くて「次はなんとかしなきゃ、1位を取らなきゃ」という重たい感覚に似ていた。
そのせいで、私はミスを連発してしまった。少しは慣れたはずの旋律でも、指が震えてぎこちなく、思うように動いてくれなかった。