* * *

「……すごいな、景太」

 ルナは2人で教室から抜け出した景太と百合を見て、顔を赤くしながら呟く。

 教室はあの花里景太に彼女が居たと分かり、驚く声や残念がる声で賑わっていた。

「花里に彼女がいたとはな~」

「雨宮さんと付き合ってたなんて……」

「こりゃ、花里ファンが泣くな」

 その様子に、ルナは苦笑いした。

「花里君、積極的で素敵ですわ~!」

 ルナの隣で菫がうっとりとしていた。

「恋人って、なんだか良いですわね」

「うん……そうかもね」

 菫の言葉に、ルナは苦笑いしつつも頷いた。

「そういうルナ君にもいるじゃないですか」

「え……?」

「ハルに聞きましたわ。週末、デートなんでしょう?」

 菫はにこやかに尋ねた。

「そ、それは……」

 ルナは菫が自分とハルの関係を知っていることに驚き、思わず口ごもった。

 気を遣っていたため、ハルとのことを菫には話せずにいたのだ。

「藤堂さん、あの……」

「ハルと同じ顔をしてますわ……気になさらないで。ルナ君の幸せが、わたくしの幸せなのですから」

 菫はそう言って柔らかく微笑む。

「デート、楽しんできてくださいね」

「……うん。藤堂さん、ありがとう」

 ルナは微笑みながら頷くと、荷物を持って立ち上がった。

「それじゃあ、またね」

 教室を出るルナに、菫は手を振った。

 チョコは渡さなかった。