ハルと菫はチョコレートが冷めるのを2人で待つ。

「……菫、お菓子作り得意なんだね」

 ハルの言葉に、菫は首を傾げた。

「そうかしら?」

「うん!だって手際がすっごくいいもの」

 ハルが明るく笑うのを見て、菫は照れ笑いを浮かべる。

「ありがとう……きっと、去年も作ったからですわ」

「去年も?」

「ええ。ルナ君に本命チョコを贈ったのですが……結局わたくしの気持ちに気付いては貰えませんでしたわ」

「あ……」

 ハルは気まずそうに目を逸らした。

 それを見て菫は優しく微笑んだ。

「いいのよ。初めてハルから伝えられたときは驚いたし、ショックもありましたけど……ルナ君の幸せが、わたくしの幸せですし、ハルは大事な友達ですから」

「菫……」

「さ、湿っぽい話は無しですわ!そろそろ混ぜましょう」

 菫は泡立て器でボウルの中身を混ぜ始めた。

 チョコと生クリームが滑らかに混ざり合っていく。

「ハル、バットを準備して下さる?オーブンシートを敷くのを忘れないでね」

「うん。分かった」

 ハルはバットにオーブンシートを敷いた。

「……よし、流し込みますわ」

 菫はバットにチョコを流し込んだ。テーブルの上でトントンとしながら、表面を平らにする。

「それでは冷やしましょうか」

 菫はチョコを大きな冷凍庫に入れた。

「洗い物、終わったよ」

 百合がハンカチで手を拭きながら戻ってきた。菫はその様子を見て微笑む。

「しばらく休憩しながら待ちましょう」

 チョコレートを冷やしている間、3人はテーブルに座ってお喋りすることにした。