* * *
2人が藤堂家の玄関ホールに着くと、そこにはハルの姿があった。
「菫!百合ちゃん!」
ハルは2人を見つけるなり表情を明るくする。
「あら、もう来ていらしたのね。ハル」
「久しぶり、ハルさん」
「うん。久しぶり」
「……さて、全員揃ったところで始めましょうか」
菫は悪戯っぽく笑って拳を突き上げた。
「バレンタインのチョコレート作り、開始ですわ!」
菫がそう言ったとたん、どこからともなくエプロンを持ったメイドが現れた。
「お嬢様方、これを」
「ありがとうございます!ですわ」
3人は白いエプロンを身につけた。
「材料は?」
「キッチンに揃っています」
「では行きましょう、ハル、雨宮さん」
菫に連れられて、2人はキッチンに向かった。
長い廊下を歩いてキッチンに辿り着くと、そこは3人で使うには広すぎる部屋だった。
壁沿いの棚には大小様々な料理器具が綺麗に整頓されて揃っており、普通の家庭には置いてないような物もあった。
部屋の中央には大きなテーブルがあり、そこに板チョコやトッピングや生クリームなどが置いてある。
「こんな良いキッチン、本当に使っていいの……?」
百合が心配そうに聞くと、菫は微笑んだ。
「もちろんですわ」
「早く始めよう!」
ハルがワクワクしながら目を輝かせる。
「そうですわね。……では、まずはチョコを刻みましょう」
菫に頷いて、2人はチョコを刻み始めた。
手際よくチョコレートを刻んでいく菫とハル。一方で百合の包丁裁きは覚束なく、切れたチョコレートは少しばかり大きかった。
「……百合ちゃん、もう少し細かい方がいいんじゃないかな?」
隣で切っていたハルが、苦笑いしながら百合に声を掛ける。
「そ、そうかな……痛っ!」
手元が狂い、百合は指を切ってしまった。
それを見たハルは慌てて菫の袖を引く。
「わ!菫、絆創膏!」
「ここにありますわ!」
菫はテーブルに置いてあった絆創膏の箱を開け、百合の指に絆創膏を巻いた。
「百合ちゃん、もしかして包丁苦手?」
ハルが尋ねると、百合は俯く。
「……うん。ごめんね」
申し訳なさそうにする百合を見て、菫は優しく微笑む。
「大丈夫ですわ!他にも仕事はありますから」
菫はそう言うと、生クリームを差し出した。
「雨宮さん、生クリームを温めてくださる?」
「う、うん。分かった」
百合は生クリームを持ってコンロの方へ向かうと、生クリームを鍋に流し、火をつけた。
お菓子作り……というか、料理全般が正直あまり得意では無かった。
それでも今回チョコ作りに参加したのは、景太に渡すためだった。
実は、毎年大量にチョコを貰ってくる景太に遠慮して、チョコを渡したことは無かった。
しかし、今は景太の彼女だ。
自分の気持ちを伝えるためにも、どうにかして手作りチョコを渡したかった。
(まぁ、景太のことだし、今年も沢山貰うだろうから、ちゃんとしたの作らないと……)
百合は気合いを入れて鍋を見つめた。
「刻み終わりましたわ!」
しばらくして、菫が声を上げた。
「百合ちゃん、生クリームどんな感じ?」
「もうすぐ沸騰しそうよ」
「じゃあ、チョコと混ぜましょう」
菫は刻んだチョコをボウルに入れた。
「雨宮さん、生クリームをこの中に入れて下さる?」
「分かった」
百合は生クリームを同じボウルの中に流し込んだ。
「ハル、湯気が出なくなるのを待ってから、混ぜ合わせて下さいね」
「うん、分かった!」
「じゃあ私、包丁とか鍋とか洗っておくね」
「お願いしますわ」
百合は洗い物をしに流しの方へ向かって行った。
2人が藤堂家の玄関ホールに着くと、そこにはハルの姿があった。
「菫!百合ちゃん!」
ハルは2人を見つけるなり表情を明るくする。
「あら、もう来ていらしたのね。ハル」
「久しぶり、ハルさん」
「うん。久しぶり」
「……さて、全員揃ったところで始めましょうか」
菫は悪戯っぽく笑って拳を突き上げた。
「バレンタインのチョコレート作り、開始ですわ!」
菫がそう言ったとたん、どこからともなくエプロンを持ったメイドが現れた。
「お嬢様方、これを」
「ありがとうございます!ですわ」
3人は白いエプロンを身につけた。
「材料は?」
「キッチンに揃っています」
「では行きましょう、ハル、雨宮さん」
菫に連れられて、2人はキッチンに向かった。
長い廊下を歩いてキッチンに辿り着くと、そこは3人で使うには広すぎる部屋だった。
壁沿いの棚には大小様々な料理器具が綺麗に整頓されて揃っており、普通の家庭には置いてないような物もあった。
部屋の中央には大きなテーブルがあり、そこに板チョコやトッピングや生クリームなどが置いてある。
「こんな良いキッチン、本当に使っていいの……?」
百合が心配そうに聞くと、菫は微笑んだ。
「もちろんですわ」
「早く始めよう!」
ハルがワクワクしながら目を輝かせる。
「そうですわね。……では、まずはチョコを刻みましょう」
菫に頷いて、2人はチョコを刻み始めた。
手際よくチョコレートを刻んでいく菫とハル。一方で百合の包丁裁きは覚束なく、切れたチョコレートは少しばかり大きかった。
「……百合ちゃん、もう少し細かい方がいいんじゃないかな?」
隣で切っていたハルが、苦笑いしながら百合に声を掛ける。
「そ、そうかな……痛っ!」
手元が狂い、百合は指を切ってしまった。
それを見たハルは慌てて菫の袖を引く。
「わ!菫、絆創膏!」
「ここにありますわ!」
菫はテーブルに置いてあった絆創膏の箱を開け、百合の指に絆創膏を巻いた。
「百合ちゃん、もしかして包丁苦手?」
ハルが尋ねると、百合は俯く。
「……うん。ごめんね」
申し訳なさそうにする百合を見て、菫は優しく微笑む。
「大丈夫ですわ!他にも仕事はありますから」
菫はそう言うと、生クリームを差し出した。
「雨宮さん、生クリームを温めてくださる?」
「う、うん。分かった」
百合は生クリームを持ってコンロの方へ向かうと、生クリームを鍋に流し、火をつけた。
お菓子作り……というか、料理全般が正直あまり得意では無かった。
それでも今回チョコ作りに参加したのは、景太に渡すためだった。
実は、毎年大量にチョコを貰ってくる景太に遠慮して、チョコを渡したことは無かった。
しかし、今は景太の彼女だ。
自分の気持ちを伝えるためにも、どうにかして手作りチョコを渡したかった。
(まぁ、景太のことだし、今年も沢山貰うだろうから、ちゃんとしたの作らないと……)
百合は気合いを入れて鍋を見つめた。
「刻み終わりましたわ!」
しばらくして、菫が声を上げた。
「百合ちゃん、生クリームどんな感じ?」
「もうすぐ沸騰しそうよ」
「じゃあ、チョコと混ぜましょう」
菫は刻んだチョコをボウルに入れた。
「雨宮さん、生クリームをこの中に入れて下さる?」
「分かった」
百合は生クリームを同じボウルの中に流し込んだ。
「ハル、湯気が出なくなるのを待ってから、混ぜ合わせて下さいね」
「うん、分かった!」
「じゃあ私、包丁とか鍋とか洗っておくね」
「お願いしますわ」
百合は洗い物をしに流しの方へ向かって行った。