3学期が始まり、1カ月が経った。

 帰りのHRが終わり、2年1組の教室も生徒達の喋り声で賑やかだ。

 窓の外では雪が降っている。2月ももうすぐ半ばだが、春はまだ遠い。

 いつもなら憂鬱なこの時期だが、ルナの心はウキウキしていた。もうすぐ、ハルとデートだからだ。

(デート、どこに行こうかな……)

「ルナ、何ニヤニヤしてるんだ?」

「うわっ!?景太……!」

 背後から突然声をかけられ、ルナはビクリと肩をすくめた。

「まぁ、どうせハルのことだろ」

「ああ……はい」

「やっぱりな」

 景太は得意気に笑った。

「……色々あったけど、吹っ切れたみたいでよかったよ」

「……うん」

 本当に色々あった。ハルが天使だということ。婚約者がいること……。

……それでも。

「決めたんだ。ハルと一緒に居るって」

 ルナがそう言って微笑うと、景太はニヤリとしてルナの肩を叩く。

「お熱いな」

「そういう景太だって」

 ルナは悪戯っぽく笑いながら、景太を見た。

 全国大会が終わった後、景太と百合から付き合い始めたと報告を受けたのだ。よそよそしかったのが嘘みたいに、2人は元に戻っていた。

 放課後も、3人で帰る日々が戻ってきて、ルナは心の底から嬉しかった。

「よかったね。仲直りできて」

「ああ。ありがとな」

 景太はそう言うとニカッと笑う。

 2人が話していると、百合がこちらに駆け寄ってきた。

「あ、百合、一緒に帰ろうぜ」

「ごめん、今日は用事があるから、2人で帰って」

「用事?」

 百合の言葉に、2人は首を傾げる。

「そう。ちょっと藤堂さんの家でね……」

「何かするの?」

「俺達も一緒に行っちゃ駄目か?」

 ルナと景太が不思議そうに尋ねていると、百合の後ろから菫が顔を出した。

「駄目ですわ」

 菫は人差し指を口に当てて、ウインクする。

「女の子だけの、秘密の時間ですから」

 そう言って微笑む菫を見て、2人は首を傾げた。

「さ、行きましょう。雨宮さん」

「うん」

 2人は百合と菫が教室を出て行くのをぼんやりと見ていた。

「女子の秘密の時間って、何だ?」

「さぁ……」

 ルナはこてんと首を傾げた。