* * *

「ただいまー」

 文化祭が終わり、ルナが家に帰ると、ヨルが深刻そうな顔で立っていた。

「ルナ兄……」

「ヨル?どうしたの?」

「これ、魔界から手紙」

 ルナは手紙を受け取って、封筒から中身の手紙を取り出した。

 すると、手紙から悪魔王…父の姿が浮かび上がった。

『ルナ、お前が魔界を旅立ってから1年と半年が経ったが、何の音沙汰も無いのはどういうことだ?』

 低く響く父の声に、ルナはびくりと体をすくめた。

『お前が天使の殺害を躊躇っているなら、迷わず殺せ。天使は我々悪魔の仕事を邪魔する害虫だ。もしまだ見つけられていないなら…今すぐ探し出せ。早くしないと大天使と婚礼を挙げてしまう。そうすれば天使共の力が増幅してしまう……よいか、必ず殺すのだぞ!さもなくばお前を殺してしまうぞ!』

 ルナはその剣幕に体の震えが止まらなかった。

「ルナ兄、もう時間が無いよ」

 ヨルは真剣な顔で言った。

「……オレ、ルナ兄に死んでほしくない」

「でも、大天使の娘なんて、どこに……」

 そう弱音を吐くルナの手紙を持つ手を、ヨルはそっと包んだ。

「オレも協力する。だからルナ兄も本気になって」

 ヨルのいつになく真剣な表情に、ルナは頷くしかなかった。