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 ルナがハルに連れられて来たのは、お化け屋敷だった。

 会場になっている2年B組の教室は暗幕で囲まれており外から中は見えない。そして、入り口の前にある、赤い「呪われた病院」という文字が書かれた看板が恐ろしくて、ルナはぶるりと身震いした。

 悪魔であるルナ自身、人間からしたら自分は恐ろしい存在であると自覚している。しかし、人間界に来てから知った、ありとあらゆるお化けはあまり好きではなかった。悪魔のルナとしては、どれも得体が知れなくて怖すぎたのだ。

(病院ってことは、幽霊も出るのかな……)

 ルナが冷や汗をかいていると、受付を担当していたお団子頭の女子生徒が、ハルを見つけて嬉しそうに駆け寄ってきた。

「あ、ハル!いらっしゃ~い!」

「美亜。調子はどう?」

「絶好調!入ったお客さん、みんな超怖がってる!」

 美亜は得意気にそう言うと、ルナの方を見てにこりと笑った。

「黒崎君、ハルと楽しんでいってね」

 美亜に笑顔を向けられ、ルナは強がりの笑顔を作る。

「う、うん!ありがとう……」

「じゃあ2人とも、行ってらっしゃ~い!」

 美亜に促され、2人はお化け屋敷の中に入っていった。

 中は薄暗くてよく見えない。いつどこから何が出てくるのか分からない恐怖に、ルナは身震いした。

 しかし、ハルの手前、あまり情けない声を上げるわけにもいかない。

(僕は悪魔……何も怖くない……)

 そう念じていた矢先だった。

 何かがルナの足を捕まえたのだ。

「あそぼ……あそぼ……」

「ひぃっ……!?」

 足元に気を取られていると、今度は目の前からひんやりした何かに襲われた。

「うわっ!?」

 顔面に叩きつけられたそれに触ってみると、じっとりとした感触があった。

(こ、これは雑巾……!落ち着くんだ僕!)

 なんとか足を振り払い出口へ向かうルナ。しかしその腕を誰かが掴んだ。

「置いていかないでよルナ~……」

 おどろおどろしい声の主はハルだったが、ルナの精神はもう限界だった。

「ぎゃーーーー!!」

 ルナの悲鳴が校舎中に鳴り響いた。