* * *

 体育祭もいよいよ終盤に差し掛かった。次はルナ達の出るクラス対抗リレーだ。

「緊張してるか、ルナ?」

 前に座っている景太が声をかけてきた。

「うーん……少し、かな」

 ルナは苦笑いしながら答える。

 実は、ルナはアンカーを任されているのだ。つまり、クラスの命運を左右するのはルナの走りだ。

「そっか……でも、俺とお前なら大丈夫だ」

 景太はそう言っていつものように笑った。その笑顔には、昨日のような落ち込みは見られなかった。流石スポーツプレイヤー。勝負に私情は持ち込まない。景太らしかった。

「うん……そうだね」

 ルナも景太の気持ちに応えるべく、いつも通りの優しい笑顔で頷いた。

「2年生クラス対抗リレーに出場する人は準備してくださーい!」

 係の生徒に促され、ルナ達はそれぞれのポジションについた。

「いちについて……よーい……」



 パアン!



 ピストルの音が鳴り響いて、第1走者が走り出した。

 赤組は劣勢だ。5組中4位の位置につけている。

 そのまま第2走者にバトンが渡る。依然として順位は上がらない。

 そしていよいよ第3走者の景太にバトンが渡った。

「任せろ!」

 景太は見事な走りで2人も抜いた。観客席から黄色い声援が聞こえる。現在赤組は2位だ。

「ルナ!」

 ルナは景太からバトンを受け取り、グラウンドを力強く蹴った。

「頑張れ、ルナ!」  

 ハルの声が聞こえた気がした。

(ハルが見てる……!)

 そう思ったらいくらでも頑張れた。

 前を走る白組の背中が近くなる。

(追い抜ける!)

 ルナは更に加速して、白組を追い抜いた。

「行け!黒崎!」

「ルナー!」

 クラスメイトや観客の声援に背中を押され、ルナはゴールテープを切った。

 順位は……1位。

「やった……!」

 ルナは顔をほころばせながら、胸の前でガッツポーズをした。

「ルナ!」

 大好きな声が聞こえて、観客席を探すと……笑顔でこちらに手を振っているハルの姿を見つけた。

 ルナはハルにVサインを見せる。

 それを見たハルも、ルナに向かって元気よくVサインを見せた。