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 その日の放課後、ルナは久しぶりに部活に参加した。もう9月。年末に控えた全国大会に向けて動き出さなければならない時期だ。

 脚は治りたてだが、もう運動に支障が無い以上、チームのためにも部活に参加したかった。

「黒崎、脚はもう大丈夫なのか?」

 心配そうな監督に、ルナはしっかりと頷く。

「はい。もう問題なく走れます」

「そうか。……分かった。無理はするなよ」

「はい!」

 ルナは返事をして、ウォーミングアップをする仲間達のもとに向かった。

「ルナ、今日から復帰か」

 景太がアキレス腱を伸ばしながら、ルナに声をかける。

「うん。いつまでも休んでられないからね」

「体育祭といい、部活といい、やる気十分だな、ルナ」

 景太は嬉しそうな表情でルナを見る。ルナは景太の言葉に元気よく頷いて答えた。

「うん!何だか頑張ろうって気持ちが止まらなくて……」

 そう言うルナに、景太はふと尋ねる。

「好きな子でもできたのか?」

「えっ!?」

 図星を突かれてルナは固まった。

「好きな子できると格好よく見られたいって思うみたいだもんな。よく分かんないけど」

「け、景太……」

「ま、部活も体育祭も恋も、親友として応援するぜ」

 頑張れよ。と景太は自分のウォーミングアップを済ませてグラウンドに走っていってしまった。

 一方、ルナは口をパクパクさせたままその場を動けなかった。

(まさか景太に気付かれるなんて……)

「ランニングするぞー!」

 景太はいつも通りキャプテンらしく号令をかけている。きっと何か特別考えがあったわけじゃないのだろう。

(ほんと、鈍いような鋭いような……。景太って、たまに読めないんだよな)

 ルナは溜息をついて景太達のもとへ向かった。