* * *

 河川敷で打ち上げられた花火は、病院の3階からも綺麗に見ることができた。

「お姉ちゃん、花火綺麗だね!」

 涼介はハルに向かって満面の笑みを見せる。

「うん。そうだね、涼介」

 看護師達に許可を取って、少し遅い時間ではあるが、ハルは涼介の病室で一緒に花火を見ていた。

(今頃ルナ達は花火大会か……)

 花火大会に行きたくなかった訳じゃない。ただ、涼介を差し置いて祭りを楽しむ気になれなかったのだ。

ティロン!

 不意に、ハルのスマホが鳴った。

 スマホの画面を確認すると、菫からのメッセージだった。

『玉砕しましたわ。応援してくれたのにごめんなさい』

「え……!」

 ハルは驚いて目を丸くした。菫の告白を、あのお人好しなルナが断ったのだ。

(ルナに菫を傷つける意図がある訳ない。てことは、ルナには他に好きな人が……?)

 ハルはルナの好きな人を想像した。が、どうも胸が苦しくなって止めた。

(ルナ。君は一体、誰が好きなの……?)

 ハルは花火を見ながら、考えても分からない問いに頭を巡らせた。