その日の放課後、ルナは景太と百合、そして菫と共に帰り道を歩いた。

「全科目合格できて安心したぜ……」

そう言う景太に、ルナは笑いながら頷く。

「赤点出したら、試合出してもらえないもんね」

「ああ、監督そこの所厳しいからな……」

そうは言いつつも、景太は赤点をとったことがない。いつもギリギリでかわしているのだ。さすがサッカー部キャプテン。勝負強さはなかなかだ。

「まぁ、みんなで花火大会に行けて良かったじゃありませんか」

そう穏やかに言う菫に、百合は頷いた。

「そうね。……でも私達は、まずは関東予選ね」

「おう。見てろよルナ。お前を全国に連れてってやるからな」

「うん!その場には行けないけど、応援してるからね」

4人が談笑ながら歩いていたその時。

「ルナ兄!」

背後から声をかけられ、ルナは思わず振り返った。

男なのにツインテールが似合う華奢な体と、睫毛の長い整った顔立ち。そしてよく通る声。

その少年を、ルナはよく知っていた。

「ヨル……!?」

魔界にいるはずの弟、ヨルだった。

「ルナ、弟いたのか……!?」

「初めて見たわね……」

「ルナ君に似てますわ……」

驚き目を丸くする3人を見て、ヨルは行儀良くお辞儀をした。

「黒崎ヨルです。いつも兄がお世話になってます」

そう言って、無邪気な笑顔を覗かせるヨル。ルナはこの状況が理解できずに立ち尽くしていた。

(どうして、ヨルが人間界に来たんだ……?)

ヨルはにこにことしながら話し続けた。

「ルナ兄、みんなのこと紹介してよ」

「あ、ああ……」

ルナはヨルに促されるまま、3人を紹介した。

「親友でサッカー部キャプテンの花里景太と、マネージャーでお世話になってる雨宮百合さん。それと、クラスメイトの藤堂菫さん」

「よろしくな」

「よろしくね」

「よろしくお願いいたします。ヨル君」

「はい!よろしくお願いしますね!」   

そう返事をして無邪気に笑いながら、ヨルは菫の手を取って言った。

「ときにお嬢さん、オレとデートしませんか?」

「で、デート……?!」

顔を赤くする菫に、ヨルは優しく笑いかける。それを見て、ルナは額に手を当てた。

(あ~始まった……)

ヨルには女性を口説く癖がある。しかも性質が悪いことに、ヨルはよくモテるのだ。彼に魅了された女性達は数知れず。よく実家に山のようにファンレターが届くため、ルナも頭を悩ませていた。

「こら、藤堂さんを揶揄うなよ」

ルナはそう注意しながら、ヨルを菫から引き剥がす。

「揶揄ってないさ。美しいレディは口説かなきゃ失礼だろ?」

全く悪びれないヨルに、ルナは溜息をついた。

「……みんなごめん。今日はヨルを連れて帰るから、先に行くね」

「おう、分かった」

ルナはヨルの腕を引っ張った。

「ほら、行くぞヨル」

「分かったよ……またね、お嬢さん」

菫に対してヒラヒラと手を振るヨルを連れて、ルナは帰路についた。