もうなにもかも、どうなってもいいという気持ちだった。
「なに言ってんだよ。俺たち最初はあんなんだったけど、もう友達――」

「違う!!」
燐音は髪を振り乱して否定した。

「友達なんかじゃない。友達じゃなくて……好きになったんだ」
か細い声。

消え入りそうな声。
だけど詠斗の耳にはちゃんと聞こえていた。

「好きって……俺のこと?」
「それ以外に誰がいるんだよ」

恥ずかしくて声が震える。
顔が耳まで真っ赤に染まり、うつむいて顔を上げることができない。

「嘘……だろ?」
詠斗の声が耳朶を揺るがすけれど、その顔を見ることはできなかった。

きっと自分のことを蔑んでいる。
気持ち悪いを思っているかもしれない。
そんな詠斗の顔を見ることができない。