「俺、取り返しのつかないことをしたってわかってるつもりだ。だから謝ったのに――」
「そうじゃない!」

思わず声を荒げてしまう。
教室の中が一瞬静まり返り、それからひそひそと話声が聞こえてくる。

どれもが燐音へ向けた蔑みの声ばかりだ。
燐音はいたたまれない気持ちになって勢いよく教室を飛び出した。

「おい、燐音!」
すぐ後ろを詠斗が追いかけてくる。

人がいない渡り廊下まで来た時、ついに燐音は根負けして立ち止まり、振り向いた。
どこまでも追いかけてくる詠斗を引き離すことは、燐音には難しい。

「もう、ほっといてくれよ!」
「なんで? 俺たち友達だろ?」

詠斗はまた泣いてしまいそうな顔になる。
すがりつくように手を伸ばされて、燐音はそれを振り払っていた。

「友達なんかじゃない」
震える声で言った。