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燐音が教室へ入った時、すでに詠斗が登校してきていた。
そして燐音を見つめると仏頂面をして近づいてくる。

「どこに行ってたんだ?」
「コンビニ」

燐音は短く返事をして、手に持っていたペットボトルのお茶を見せた。
中身はまだ半分ほど残っている。

「朝飯は食べたのか? 昨日の晩も食べなかっただろ?」
「大丈夫だよ。僕は子供じゃないんだから」

なんでもかんでも首を突っ込んで心配してくる詠斗が今はうとましい。
どうせ、自分のことなど好きではないくせに。

「なぁ燐音、まだ怒ってるのか? 俺はどうすればいい?」
困り顔で訊ねてくる詠斗に燐音はそっぽを向いた。

キスしたことを謝罪なんてしてほしくなかった。
なんて、この場で言えるはずもない。

それに、それじゃまるであのキスが特別であってほしかったと言っているようなものだった。