服や荷物を入れておくクローゼットは一応別であるし、備え付けの机と小さな本棚もある。
これだけあれば文句なく過ごすことができる。

なによりも燐音にとってはひとり部屋というところが重要なのだから。
部屋の狭さなどほとんど関係なかった。

隠して自分だけの城を手に入れた気持ちになり、さっそく実家に送ってもらった自分も荷物を開封した。
ダンボール1つ分にまとめられて荷物はほとんどが着替えと、お気に入りの本で埋められている。

それらをひとつひとつ丁寧に片付けていってもクローゼットや本棚がいっぱいになることはなかった。
改めて自分に必要なものがごくわずかだということに気が付かされる。

ちょっと悲しい気がするけれど、趣味を増やせば人脈が増える。
それをうとましいと感じていた燐音には、ちょうどいい量だった。

そうしてひとり部屋が完成した、そのときだった。
コンコンとノック音が聞こえてきて燐音は飛び跳ねるようにして驚いた。

こんな自分に誰が何の用事だろう?