「今日はどうかしたの？　なんでそんなによそよそしいの？」
思っていたことをストレートに聞くと、詠斗は首をかしげて「なんのことだ？」と、聞き返した。

その視線は彷徨っていて、とてもたどたどしい。
「ごまかさないでよ。僕、なにかしたかな？　したなら、謝るから」

見に覚えがなくても相手を傷つけたり不快な気持ちにさせることはある。
もしそうなのだとしたら、ちゃんと伝えてほしかった。

だけど詠斗は大きくため息を吐き出すと「そうじゃない」と、左右に首を振ったのだ。
自分が悪いことをしたわけじゃないとしたら、今日の詠斗の態度はなんなんだろう？

ますますわからなくてすがりつきたい気分になったとき、不意に詠斗が頭を下げてきた。
「ごめん！」

「え？　なにが？」
突然の謝罪についていくことができずに混乱する。

詠斗はいつでも燐音を守ってくれていたし、謝られないといけなことをされた覚えもなかった。
「その、昨日……キスとかして悪かったと思ってる」

深く頭を下げて謝罪する詠斗に燐音の頭は真っ白になった。