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朝食を取ってバスに乗っても、なんとなく詠斗の様子はおかしいままだった。
いつもならしつこいくらいに絡んでくるのに、今日はよそよそしく、バスに乗ったらすぐに目を閉じてしまった。

それでも行きと同じように燐音を窓際の席に座らせてくれたから、別に怒ってるとかではなさそうだ。
昨晩は一睡もできなかった燐音もバスの中では眠るつもりでいた。

けれど、隣で目を閉じている詠斗のことが気がかりで、学校に到着するまで眠ることができなかったのだった。
「詠斗」

寮の部屋に戻ってからようやく燐音はそう声をかけた。

何度も声をかけようと思ったけれど、その度に詠斗が逃げるように燐音から遠ざかったので話かけるタイミングを見失っていたのだ。

寮の部屋が同じでなければ、こうして話かけることはできなかったかもしれない。
最初は嫌だったけれど今回だけは詠斗と同じ部屋で良かったと感じた。

しかし燐音に呼ばれた詠斗はビクリと肩を震わせて、ぎこちなく微笑んだ。
「な、なんだよ?」

話し方もぎこちないし、なんだかすごく距離があるように感じられる。
昨日の出来事が嘘みたいに感じられて燐音の胸がチクリと傷んだ。