☆☆☆

ふわりとした感触。
暖かくて優しくて、心地よかった。

キスの感触を思い出して燐音は何度も寝返りを内、眠れない夜を過ごしていた。

二段ベッドのすぐ下には詠斗がいて、それだけでも心臓が破裂してしまいそうなくらいドキドキしている。

キスをしたあと、詠斗はなにも言わずに部屋を出ていってしまったから、結局なにも聞けないままでいる。

あのキスはどういう意味だったのか。
どうしていきなりキスをしたのか。

聞きたいことは次から次へと浮かんできて、燐音を眠りから遠ざけていく。
「もう……眠れないじゃないか」

燐音はそう呟いてまた寝返りを打つと、自分の唇にそっと触れた。
みんなが憧れている詠斗の唇がここにあたってきたのだと思うと、顔がカッと熱くなる。

枕に顔をうずめて叫びだしたい気分だ。
そんな悶々とした気持ちで朝になってもやっぱりほとんど眠ることができなかった。

ボーッとしてベッドの上に座っていると、下でモゾモゾと動き出す気配を感じて心臓がドキリと音を立てる。