「ど、どうして泣くの? 僕、なにかした?」
オロオロと質問すると詠斗が唇を引き結んだ。

「そんな風にしなきゃならないなんて、悲しすぎるだろ」
詠斗が燐音の両手を握りしめて、そのまま引き寄せた。

抱きしめられそうになって燐音の心臓がドキリと跳ねる。
前から距離感が近すぎると思っていたけれど、それが今ではもっと顕著になってきているような気がする。

このままずるずると詠斗のペースにはまってしまえば、自分の気持ちに歯止めがきかなくなってしまうこともそう遠くはない。

そう考えた燐音はスッと詠斗から身を離して視線を反らせた。
「もう、僕のことはほっといてくれないかな」

「どういう意味だよ」
詠斗の声色が険しくなる。

それでもここで突き放して置かないと、自分がおかしくなってしまいそうだった。
「こんなの、友達同士がやることじゃないだろ。距離感がおかしいと思わない?」

「なんでだよ、このくらいのこと……」
「やらないよ! 普通の友達なら」