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大塚男子高校は全寮制の学校で、校舎の横に大きな寮が隣接されている。
生徒たちはみんなここで一緒に時間を過ごすことになるのだけれど……。

燐音は1階の一番端っこの部屋に入ると大きく息を吐き出して床に荷物を置いた。
今日は新しい教科書を嫌というほど配られたので、ここまで運んでくるだけで一苦労だった。

同じクラスの詠斗と違って運動は無縁の燐音にとって力仕事は想像以上に大変な労働になるのだ。
「やった。ひとり部屋だ」

4畳の狭い室内を見回して燐音は喜びに満ちた表情を浮かべた。

とはいえその顔は長い前髪と分厚いメガネに隠れているから、頬がピンク色に染まった程度の変化だった。

この寮では6畳の部屋でふたりの生徒が一緒に生活するのが主だったけれど、燐音は先生にむちゃくちゃお願いして一人部屋にしてもらったのだ。

狭くてもいい、なんなら廊下の端っこにダンボールを立ててもいいから、一人部屋にしてほしいと。
そんな燐音に根負けして用意してくれたのが、この部屋だった。

4畳の部屋は布団をひけばもうほとんどスペースがなくなってしまうけれど、それでも十分すぎる広さがあった。