以外と鈍感なのかもしれないと、モテモテルームメイトの顔をしげしげと見つめる。
「ほんっとこの施設に窓があったらあいつら突き落としてやるのに」

その言葉にドキリとする。
いくらなんでもそれは言い過ぎじゃないだろうか。

それに、この施設には笑えない過去がある。
「窓から突き落とすっていうのはちょっと笑えないかな」

引きつった表情で燐音が言うと、詠斗がなにかを思い出したように「あっ」と小さく呟いた。
「どうかした?」

もしかしてまたなにか怖い話でも思い出したんだろうかと、ハラハラしてしまう。
けれど詠斗は罰が悪そうに頭をかくと「ごめん、幽霊の話は嘘なんだ」と言ったのだ。

え?
嘘?

燐音は大きな目を更に大きく見開い詠斗を見つめる。
「この施設に窓がないのは、台風が何度も直撃して窓ガラスが割れたからなんだってさ」

「台風……? じゃあ、なんであんな話を?」
「悪い。燐音の怖がる顔が見たくて」