だけど克也の方はゴクリと唾を飲み込んだのがわかった。
「なるほど。男子校で女みたいな顔だとそりゃ困るよな。だから隠してたのか」

克也の言葉に京介も納得したように頷く。
「な、なんのこと?」

燐音は震える声でとぼけてみる。
が、もちろんそんなものが通用する相手じゃない。

「体も貧弱で色白で、ほんと女みてぇだなお前」
克也の手が燐音の頬を撫でる。

その瞬間背中に無数の虫が走った気がした。
こいつらは危険だ。

クマや幽霊よりももっともっと。
燐音は勢いよく立ち上がり、走り出した。

下へ逃げればいいのにみんなが待っている山の上へと向けて。
けれどもともと体力もない燐音が走って逃げるのは困難だった。

すぐに追いつかれてリュックを捕まれその場に引き倒された。