クマでも幽霊でもなかったことに驚き、ずっと先を歩いていると思っていたふたりがいたことに更に驚いて目を丸くする。
だから気が付かなかった。

今転がってしまった衝撃でメガネが外れてしまっていたことに。
「お前、詠斗の足を引っ張るなって言っただろ?」

京介がそう言いながら近づいてくる。
「え、あ……君たち、どこにいたの?」

ふたりへの恐怖心よりも疑問のほうが強くで、ついそう質問していた。
「詠斗が全然上がってこねぇから、探しにきたんだ。っていうかお前……」

克也が説明しながらも目を見開いてジッと燐音の顔を見つめてくる。
顔になにかついているだろうかと手のひらでペタペタ確認したところで、ようやくメガネが外れていることに気がついた。

転がったせいで前髪も跳ね上がり、顔面が丸見えだ。
慌ててメガネを拾ってかけるけれど、もう遅い。

ふたりには素顔をバッチリ見られてしまった。
「なんだその顔。まるで女みてぇだな」

京介が気味悪そうにつぶやく。