視線は揺れる木々に固定されてしまい、言うことをきかない。
逃げなきゃ。
早く逃げなきゃ！

心の中で思うばかりで少しも行動が伴わず、どんどん近づいてくる揺れに足がガクガクと震えだる。

クマにしても幽霊にしても、このままでは殺されてしまう！
ついに燐音の目の前で木々が揺れた。

「ギャアア！」
思わず悲鳴を上げてその場にしゃがみこんだ。

両手で頭を抱えて衝撃が来るのを覚悟する。
クマなら頭からガブリを食べられる。

幽霊なら足をひっぱられて取り込まれる。
しかし、燐音を襲ったのは予想外の衝撃だった。

体を横から両手で押されたような感覚があったかと思うと、派手に転がっていた。

今まで座っていた岩に体をぶつけて痛みで目を開けると、そこには京介と克也の姿があったのだ。
「え……？」