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いくら山がキレイでも登り続けているとそれを鑑賞する元気がなくなってきてしまう。
さっきまで他の生徒たちの背中が見えていたのに、今はそれも見えなくなってしまった。

「ごめん詠斗。先に行ってくれていいから」
「まぁだそんなこと気にしてんのか?」

隣を歩く詠斗は呆れ顔だ。
「僕さ、筋トレとかしても全然筋肉がつかないタイプだったんだ」

「そうなのか?」
隣を歩く詠斗が以外そうな表情を浮かべる。

「うん。中にはそういう人もいるんだって。僕って見た目あんなだし、体も貧弱だから筋トレして少しでも男らしくなれないか試したことがあるんだ。でもダメだった」

ふぅふぅと息を吐きながら話を続ける。
中性的な見た目に細い体。

それは燐音にとってのコンプレックスだった。
「だからさ、そういう人もいるんだよね」

燐音は自分の足元に視線を落した。
自分には筋肉がつかないタイプだと知った時、燐音はすべてを諦めた。

諦めて、逆高校デビューすることに決めた。
そうでないと、もう自分を守るすべがなかったから。