バスに乗る前にそんな気配りまでされて燐音は「どっちでもいいよ」と、返事をした。
結局詠斗が通路側に座って、燐音は窓側の席に座ることになった。

少し大きめのバスのようでリクライニングを倒しても後ろに支障がでないのがありがたかった。
グラウンドへ視線を向けると他のクラスの1年生たちも自分たちのバスが到着するのを待っているのが見える。

いつもより高い位置から見ているので、なんとなく不思議な気分になってくる。
それから先生に簡単な説明を受けてバスは動き出した。

動き出す瞬間になんとなく「うおぉ」と声が出てしまったのは燐音だけじゃない。
これから1時間30分もバス旅が始まる。

そう思ってチラリと横を確認してみると、詠斗は腕組みをして目を閉じていた。
寝るのが早くないかと突っ込んでしまいそうになったが、その寝顔があまりにもキレイで見とれてしまう。

本当はこのバス移動の時間にも詠斗といろいろ会話できるはずだと楽しみにしていたんだけれど……普段はその寝顔をマジマジと見ることはできないので、これはこれでいいかもしれない。