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詠斗と共に校舎から出るとすでに部活動にせいを出している声があちこちから聞こえてくる。
「詠斗はバスケ部に入部するんだろ? もう、入部届を出した?」

「あぁ、出したよ。でも1年生の活動は親睦会が終わってからだって言われた」
詠斗はそう言ってバスケットボールを持つ素振りをして見せた。

軽くジャンプして、両手でシュートを決める動きだ。
エアーでやってみせただけなのにすごくキレイな動きで、思わず見とれてしまう。

詠斗が本格的にバスケを始めたら、今よりももっともっと人気が出そうだ。
そう考えた瞬間胸の奥がモヤモヤした。

この気持はなんだろうと思って自分の胸に手を当てる。
「そういや燐音は何部に入るつもり?」

「僕はどこにも入らないよ」
「は? なんで?」

「部活動に興味がないし、放課後は早く帰りたいんだ」
そう答えると詠斗は珍しそうな表情を浮かべて「へぇ」と短く頷いただけだった。

誰も彼もが青春を謳歌できるわけじゃない。