「う、うん。わかった」
ようやく納得した様子に燐音に彼はまたチッと舌打ちをして教室を出ていってしまった。

それから燐音は帰る準備をしていた詠斗へと近づいた。
帰る場所はどうせ同じなのだけれど、どうしても今伝えたかった。

「あのさ、部屋のことなんだけど」
「ん? あぁ、悪い。勝手に変えてもらった」

詠斗はいたずらっ子みたいに舌を出してそう言うと、燐音に赤い色のついた割り箸を見せてきた。
「それって、僕のため?」

「なぁに言ってんだよ。このクラス35人で割り切れないから、青色の割り箸だけ3本入ってたんだよ。同じ部屋の広さで3人部屋になるんだってさ。それが嫌で変えてもらったんだ」

それは本当だろうか?
さっきの彼はそんなこと一言も言っていなかったけれど。

そう思ったけれどあえて黙っておいた。
「……ありがとう」

ボソッと言った言葉はちゃんと詠斗に届いていて「なに言ってんだよ。帰ろうぜ」と、肩を叩かれたのだった。