なにかを言えばそれでまた反感を買ってしまうかもしれなくて、燐音は黙り込んでしまった。
「なんとか言えよ。霞ぃ」

克也が燐音のメガネを奪い取った。
度の入っていない分厚いメガネが音を立てて床に落とされる。

「あっ！」
黙っているつもりがつい大きな声が出てしまった。

メガネで隠れていたクリクリとした大きな目があらわになり、慌てて手元で隠した。
「なに隠してんだよ。お前それほどブサイクなのか？」

「どれだけブサイクなのか見せてみろよ！」
克也が燐音の後ろに周り、両手を掴んで羽交い締めにした。

燐音の長い前髪だけがその顔を隠す唯一の手段となっていた。
京介がその前髪に手をのばす。

「や、やめろよ！」
必死に左右に首を振って京介の手から逃れようとするけれど、うまくいかない。

京介の右手が燐音の前髪に触れた。
「なんだよこのうっとおりしい前髪はよ。俺たちが切ってやろうか？」