「なんだ、わかってんのかよ」
突然京介の声色が険しいものに変化して、燐音は息を止める。

ふたりの顔からは笑みが消えて突き刺さるような視線を感じる。
そう、教室で詠斗と仲良くしていたときに感じた視線と全く同じものだ。

「なら話は早いよな? お前、なんで詠斗に近づいてんだ?」
克也が威嚇するように睨みつけてくる。

「な、なんでって……」
昨日予期せぬことがあったからだけれど、それは言えなかった。

言えば自分の顔が可愛いことがバレてしまう。
「同じ部屋とか関係ねぇ。お前みたいなヤツと詠斗が一緒にいるのが嫌なんだよ」

京介が燐音の肩を痛いほど強く掴んできた。
その力の強さに自分では勝つことができないことを自覚させられる。

「ぼ、僕は別になにも」
「なんだと? なにもしてねぇのに仲良くなったって言いてぇのか?」

京介の指先が更に肩に食い込んできて顔をしかめた。
このふたりは詠斗のことが好きなのかもしれない。

燐音に大して強い嫉妬を感じているように見える。
ここでなにを言ってもきっとふたりは聞く耳を持たないだろう。