翌日の朝、目が覚めた時すぐ隣に重なり合ううようにして敷かれた布団には詠斗の寝顔があった。
たった4畳しかない部屋にはテーブルと本棚があり、そこに二組の布団を引けばもう足の踏み場はなかった。

こんな距離感で眠ることができるか不安だったけれど、昨日は入学式で思った以上に疲れていたようで、気がつけば眠りについていた。

隣で寝息を立てている詠斗もそうだったようだ。
テーブルの上にある置き時計を確認してみると朝7時を過ぎたところだ。

寮の朝食は朝7時から7時半までに食べないといけないので、そろそろ行かなきゃいけない。
でも……と、燐音は隣で眠る詠斗を見つめる。

長いまつげに切れながらの目。
規則正しく呼吸する胸が布団の下で上下に揺れている。

同じ部屋にいるのだから、ほっといて1人で食事に行くわけにはいかないだろう。
こういうとき、普通なら寝ている相手を起こして誘っていくはずだ。

「え、詠斗」
慣れない名前呼びで最初からつっかえてしまった。
声もあまりに小さくて、眠っている人を起こすような効果はない。

仕方なく燐音は詠斗の肩に触れて揺さぶった。
手の下には自分のものではない、ガッッチリとした肩の感触がある。