勢いよく起き上がると、詠斗に痛いほど抱きしめられた。
「どうして? 部屋は?」

混乱しながら質問すると「帰ってきた。あんなキスされたら忘れられないだろ」と、少し怒った声で言われた。

あの小さなキスは実は効果てきめんだったらしい。
「でも、勝手に部屋を移動しても大丈夫?」

「構わないだろ。俺の部屋の相方は広い部屋をひとりで使えるから大喜びしてたんだ。今さら戻ることなんてできない」

詠斗のひとつひとつの言葉が嬉しくて仕方ない。
詠斗も燐音がいないところで燐音のことを思ってくれているとわかるから。

燐音は詠斗の背中に自分の両手を回して、ギュッと抱きしめた。
「これからも同室生活、よろしくな」

詠斗の言葉に燐音は「こちらこそ!」と、大きな声で答えたのだった。

END