相手のためだとわかっているのに、肯定することができない。
「言っとくけど俺は、最初からそんなものは覚悟の上だ」

詠斗が燐音を強く強く抱きしめた。
過去の辛い出来事まで全部ひとまとめにして温められているような感覚だ。

「これから先の困難だってわかってる。一筋縄じゃいかない恋愛だってことも。それでも、俺は燐音が好きなんだ」

「どうして僕のことをそんなに?」

「最初は見た目だけだった。でも一緒にいる内に燐音の中身も見え始めて、やっぱりすっげー好きだって思って……もう、離れられねぇんだよ」

少し身を離した詠斗は今にも泣いてしまいそうな顔をしていた。
好きで好きで好きすぎて、どいうしようもない。

そんな感情が燐音の胸に入り込んでくる。
それに感化されて燐音もまた涙が滲んできた。

「本当に僕でいいの? 後悔しない?」
「するわけないだろ」

「僕ってめんどくさいかもしれないよ?」
「そんなのもう知ってる」

「それに、それに……っ」
「もう、黙って」