中学時代の話を終えたときにはすでに外は真っ暗になっていた。
子猫はいつの間にかひざ掛けの中に戻って寝息を立てている。

燐音は何度も何度も涙を拭い、その跡が頬に残っていた。
「そっか、そんなことがあったんだな」

「でも、詠斗は違うんだろ? ちゃんと女に恋することができる。それなら、今からでも引き返して……!」

途中まで叫んだ言葉はキスによって止められた。
涙をながしていたせいでしょっぱいそれは、けれどとても優しかった。

「引き返す? どうやって?」
唇を離した詠斗が真剣な表情で質問してくる。

その質問に燐音の心臓がドクッと跳ねた。
詠斗を引き返すためにはこの関係を終わらせるしかない。

「まさか別れるつもりか?」
「……っ」
返事ができなかった。

1度知ってしまった喜びやぬくもりはそう簡単に手放すことはできない。