詠斗はしぶしぶと言った様子でそれを受け取ると「じゃ、先に行ってくる」と、部屋を出ていった。
ひとり部屋に残された燐音はホッとため息を吐き出してそのまま座り込んだ。

まさか初日からふたり部屋になってしまうなんて思っていなくてかなり心の方もかなり疲れてしまった。
少し横になるとすぐに眠気が襲ってきて、気がつけばそのまま眠ってしまっていた。

「……い、おい。起きろよ風呂に行く時間がなくなるぞ?」
体を揺さぶられて目を開けると目の前に後方級イケメン顔がいて飛び起きた。

「なっなっ」
と、わけのわからない言葉を口走りながら尻をついた状態で後ずさりをする。

途中でメガネを外していたことに気がついて、慌ててかけた。
「なんだよその反応。顔真っ赤だぞ?」

詠斗が不思議そうに首をかしげている。
その拍子に濡れ髪からしずくが滴り落ちて頬を濡らした。

「な、なんでもない!」
燐音は着替えの下着とタオルをひっつかむと、詠斗から『入浴中』の札を奪い取り、大慌てで部屋を出たのだった。