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その日の放課後、燐音は明里に言われた通り体育館裏へとやってきていた。
校舎裏よりも広い場所が取られているのは古い倉庫があるからだ。

今はもう使われなくなって捨てられるのを待つ道具たちがそこに眠っている。
『おまたせ』

5分ほど待ったところで明里がやってきた。
ふたりとも帰る準備はできているから、このまま歩きながら話せばいいのにと、燐音は心の中で思った。

『そんなに待ってないから大丈夫だよ。それより、お父さんの調子はどう?』
てっきり明里の父親の話だと思っていた燐音は自分からそう聞いた。

『うん。調子良くなってきたよ。昨日病院へ行ったら、ただの食べ過ぎだって言われたんだって』

『なんだ。そうだったのか』
それなら本当に心配はいらなさそうだと安心する。

でも、そうなってくると明里が自分をここへ呼び出した理由がわからなくなった。
『話って、お父さんのことじゃなくて?』

『え? ち、違うよ』